「ああぁ、ハラヘリ、ヘリはら」とむせび泣きながら、カレー丼の文字に惹かれよしぎゅうの門をたたく。
 もっぱら「まず〜い」という評判のカレー丼を食味したかったのだ。
 ところが、カウンターに座った瞬間、そういえば「すき家」も今日から牛丼販売中止になったよなあ、牛丼が俺を呼んでいるぜよ、よしぎゅうもいつなくなるかわからんし、ここで食わねば悔やんでも悔やみ切れぬわー、ままよ、カレー丼なんかクソ食らえぃーといふ気持ちになってしまい、思わず「牛丼並とたまご」。
 これでもう逢えぬのか、と想いを馳せながら食すよしぎゅうは、心なしか肉の量が少なくなっているような気もして、あはれ、涙を禁じ得なかった。
 僕は、無理矢理テンションをあげるため、「てやんでぇい、べらんめぇい」と意味もなくつぶやき、さらには、噂のカレー丼の不味さをあれこれと妄想し尽くした末に、ようやく空元気が出て、よしぎゅうとの今生の別れに立ち向かう覚悟ができたのであった。
 さらば、よしぎゅう、流れるままに、まにまに。
 その時、最愛の友を一人失った気がした。廻り巡って、生々流転、いつかまた逢える日を、僕は願う。